理科・科学 / 大学生・大学院生 / 深く学ぶ

自然選択とは何か

自然選択は、環境の中で生き残りや繁殖に差が出る性質が、世代を通じて広がりやすくなる仕組み。

まず一言で

同じ種類の生き物でも、すべての個体がまったく同じではありません。

少し大きい個体、小さい個体、色が濃い個体、動きが速い個体がいます。

ある環境で、特定の性質を持つ個体が生き残りやすく、子を残しやすいとします。

すると、その性質は次の世代で増えやすくなります。

自然選択は、環境の中で生存や繁殖に差が出る性質が、世代を通じて広がりやすくなる仕組みです。

読む順番

まず一言自然選択は、環境の中で生き残りや繁殖に差が出る性質が、世代を通じて広がりやすくなる仕組み。
なぜ学ぶ自然選択は、進化を考える中心概念の一つです。
次に進む- 適応 - 遺伝的浮動 - 突然変異 - 性選択 - 集団遺伝学

つまずきポイント

つまずき 01 最初にどこを見ればいいかわからない

まず全部を理解しようとしなくて大丈夫です。最初は、何を分けて見ればよい概念なのかだけを押さえます。

つまずき 02 日常語と専門語が混ざる

同じ言葉でも、科学では決まった意味で使います。まず日常の意味と、ここでの意味を分けます。

つまずき 03 原因、条件、結果が混ざる

何が条件で、何が変化して、何が結果なのかを分けると、説明が急に読みやすくなります。

自然選択とは何かの「個体差と環境」を説明する図解
図解 01 / 個体差と環境 差がなければ選ばれようがない

なぜ学ぶのか

自然選択は、進化を考える中心概念の一つです。

生き物の形、行動、分布、病原体の変化、薬剤耐性などを考えるときに重要になります。

ただし、自然選択を「強いものが勝つ」とだけ覚えると危険です。

何が有利かは環境によって変わります。

また、生き残ることだけでなく、繁殖に関わる差も重要です。

自然選択とは何かの「世代で割合が変わる」を説明する図解
図解 02 / 世代で割合が変わる 自然選択は世代で見る

何がわかるようになるのか

自然選択がわかると、次の問いを考えられます。

  • なぜ生き物には環境に合った特徴が見られることがあるのか
  • なぜ抗生物質が効きにくい細菌が増えることがあるのか
  • なぜ「進化」は一個体の努力ではなく、世代を通じた集団の変化なのか
  • なぜ環境が変わると、有利な性質も変わるのか
  • なぜ進化は目的に向かって進むとは限らないのか

自然選択は、生物を目的論で説明しすぎないためにも重要です。

自然選択とは何かの「有利さは環境で変わる」を説明する図解
図解 03 / 有利さは環境で変わる 強い弱いではなく、環境との関係

超わかりやすい説明

自然選択には、少なくとも三つの要素があります。

一つ目は、個体差です。

同じ集団の中に、性質の違いがあることです。

二つ目は、その違いが生存や繁殖の差に関係することです。

ただ違うだけでは、自然選択にはつながりません。

三つ目は、その性質が次の世代に受け継がれうることです。

受け継がれる性質でなければ、世代を通じて割合が増えにくいからです。

この三つがそろうと、集団の中で性質の割合が変わることがあります。

自然選択とは何かの「個体の変身ではない」を説明する図解
図解 04 / 個体の変身ではない 集団内の割合が変わる話

例え話

同じ場所に、色の明るい虫と暗い虫がいるとします。

背景が暗い木の皮なら、暗い虫のほうが見つかりにくいかもしれません。

鳥に食べられにくければ、暗い虫は子を残す機会が増えるかもしれません。

すると、次の世代では暗い色の虫の割合が増える可能性があります。

この例で大事なのは、虫が「暗くなろう」と努力して変身するわけではないことです。

もともとある差の中で、環境によって残りやすさに差が出る、という点です。

自然選択とは何かの「薬が効きにくい集団」を説明する図解
図解 05 / 薬が効きにくい集団 抗生物質の話でも基本構造は同じ

図解

自然選択は、一匹の生き物が一生の中で別の生き物へ変わる話ではありません。

集団の中に差があり、その差が生存や繁殖に関係し、世代を通じて割合が変わる話です。

一世代だけ見ると小さな差でも、世代を重ねると集団全体の特徴が変わることがあります。

自然選択とは何かの「確認問題を図で解く」を説明する図解
図解 06 / 確認問題を図で解く 三つがそろうかを確認する

よくある誤解

一つ目の誤解は、自然選択を「強いものが勝つ」と考えることです。

何が有利かは環境によります。

大きいことが有利な場合もあれば、小さいことが有利な場合もあります。

二つ目の誤解は、生き物が必要だから意図して進化すると考えることです。

自然選択は、意図や努力そのものを前提にしません。

個体差、環境、繁殖の差、遺伝が関係します。

三つ目の誤解は、進化が必ず進歩を意味すると思うことです。

進化は、世代を通じた集団の性質の変化です。

人間から見て「進歩」と呼べるとは限りません。

もう少し深く

進化には自然選択以外の要因もあります。

突然変異、遺伝的浮動、遺伝子流動などです。

したがって、ある性質があるからといって、すぐに「自然選択でそうなった」と言い切るのは危険です。

証拠を見て、どの要因がどれくらい関係しているかを考える必要があります。

自然選択は強力な概念ですが、万能の説明ではありません。

確認問題

Q1. 自然選択とは何か。

A1. 環境の中で生存や繁殖に差が出る性質が、世代を通じて広がりやすくなる仕組みです。

Q2. 自然選択は、一個体が努力して変身することか。

A2. 違います。集団内の性質の割合が、世代を通じて変わることです。

Q3. 自然選択だけで進化をすべて説明してよいか。

A3. よくありません。突然変異、遺伝的浮動、遺伝子流動なども関係します。

次に学ぶこと

  • 適応
  • 遺伝的浮動
  • 突然変異
  • 性選択
  • 集団遺伝学

AI時代にどう意味が変わるか

AIの進化という表現が使われることがあります。

ただし、生物の自然選択とAIモデルの改良は同じ仕組みではありません。

比喩として使う場合は、何が受け継がれ、何が選ばれ、どの環境で差が出るのかを分けて考える必要があります。